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ブログ 2019.3.6 これからの地方のスマートなありかたとは (2/3) – 薩摩川内市×アクセンチュア福島イノベーションセンター長中村氏トークイベント

さて、このような背景で実施した鹿児島県薩摩川内市・UDS共催の「みんなで考えるスマートなまち」トークイベント。中村さんからは今の日本の都市と地方の現状や会津若松市での実例についてお話しいただきました。

日本は戦後、東京に全てを集めるモデルで成功しました。これまでは東京に人も何もかも集まっていましたが、それでうまくいった時代はもう終わりを迎えています。もう一度配置を変える時期にきているのです。人を地方に分散させることこそが日本全体の成長につながるはずです (中村さん)

東京でバリバリ働く(働かざるを得ない)若い人はとにかく仕事ばかりでなかなか自分の時間が取れず、お給料も生活費で消えていく日々→晩婚化→少子化。これはちょっとちがうのではないか、と、中村さんは思われたそうです。

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地方に人を分散させるには、なにより仕事を地方に移すことが必要。ということで実際に中村さんご自身も会津若松市に移住。そしてアクセンチュアでは首都圏拠点機能を一部会津若松市に移転させ、会津若松市を実証フィールドとしたスマートシティ事業開発を推進されています。

中村さんはこの地方分散モデルを地方都市に水平展開したいとの思いを持っていらっしゃるので、今回中川がお声がけをして薩摩川内市にお越しいただきました。

市中村さんが拠点とされている会津若松市では 東日本大震災を機に、復興政策のひとつとして「スマートシティ会津若松」の推進を掲げてアクセンチュアと会津大学、そして市民と産官学民で連携しスマートシティを推進。国と共同でデータ集積・活用を行なっています。

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さてここであらためて「スマートシティ」って。何のことをさすのでしょう?

スマートシティは、「将来のあるべきまち」のことです。省エネや効率化も大事ですがそういった点ばかりではなくて、たとえば仕事がまずわくわくするか、が若者にとっては重要。そういった視点で、あるべきまち「スマートシティ」をつくっていくことで、地方に若者が分散していき、ひいては地方創生、日本が元気になって行くことにつながります。地方創生の武器としてスマートシティがある、と考えています”(中村さん)

お話の中では実際に会津若松市で取り組まれている例を挙げて説明くださいました。

キーワードは”オープン、フラット、シェア、ヒューマンセントリック”

産学官民がフラットになっていろんな議論をしながら、市民生活を一番に重視してサービスを考えることがスマートシティのポイントです(中村さん)

会津若松市では公用車に振動センサーを乗せていて、その車からでてくる凸凹データから道路の修繕箇所データが取れるようになっています。急ブレーキが多く危険な交差点のデータも取れるので、そのデータを警察に提供して信号センサーに反映させたりという動きが実現しているそうです。

また自分の家庭の電気使用量をスマートフォンなどでリアルタイムで見れる仕組みも作られていて、1200世帯が参加。約27%の省エネにつながっています。またそのデータはスマートシティ推進協議会に提供され、参加世帯の使用量を電力会社に共有し翌日の電力量の予測にも役立てています。

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地方に仕事を分散させるには

東京でなくてもいいけれど東京でやっている仕事がアクセンチュアに多くありました。東京でやる必要がない仕事は地方にどんどん分散させていて、福岡や熊本にもオフィス作りました。会津には200人の社員がいます。

また、アクセンチュア以外の会社にも会津にきてもらうためには企業にとっていいまちであることを訴求して行かなくてはなりません。

会津若松市では行政はもちろん、医師会も商工会議所も協力的で市民も参加している。まさに産学官民連携が整っていて、実証事業がしやすいまち、新しいものに積極的に取り組んでくれるまち、というところを訴求していきました。

あとは会津大学の学生が優秀なので、その学生を採用したい企業が会津にでてくる、という理由もあるそうです。

日本の問題が地方に凝縮しているのが今。その問題を解決して行けたら地方はまだまだ伸びる。
そのためにはデータに基づいて政策を決めることが必須であると中村さんはと強調されます。

日本はデータに関する意識が低い国ですが、会津若松市は7年前からデータ分析の時代に入っています。データに基づく政策決定システムになっているので、データ分析に基づいて議論できる環境になっています。そしてデータから導く仮説に基づいで実証事業をこれまで30プロジェクトほど走らせてきました。失敗も成功もありますがやり続けていくことが重要だと思います。

「データ分析」は日本では遅れていますが、これから必ず重要になってくる産業です。データ分析はPCとクラウドがあればいいので地方の産業としてとても有効です。地方に仕事を生むには、そういう視点ももってやって行くべきだと思います。(中村さん)

ICTは高齢者にとって、地方にとっての大きな力

市民との連携において肝となる点に、市民が市のビジョンや情報をどれだけ知っているかを測る「コミュニケーション率」があります。(市政だよりや市のホームページなど)

会津若松市では以前は5%だったところ、会津市、アクセンチュア、会津大学などで立ち上げたポータルサイト「会津若松プラス」は20%を超えています。

ちなみに、イギリスの平均コミュニケーション率40%、フランス50%、オランダ60%、デンマーク80%で、日本がモデルにしているのはエストニアの90%です

そんなエストニアではスマートフォンで選挙ができます。体の不自由なお年寄りが投票所に行かなくていいですし、開票は一瞬だそうす。

日本はデジタルやITの話をすると、都会の若者のためのもの。というイメージがありますが、エストニアはスマートフォンを高齢者対策として取り入れています。

またAIについて言えば、東京で自動運転車を走らせる必要はあまりないと思いますが、地方や山間部は必要になってきます。高齢者が免許返納して二次交通がない場所が増えているので。つまり、ICTは高齢者のためにパワーを発揮します。ICTは地方が良くなるための武器です。データを見ながら、このまちをどうしたらいいかを考えると、どうなっていけばいいか見えてくるはずです。(中村さん)

その後、薩摩川内市のまちを牽引するゲストスピーカーを迎えて、それぞれで感じていらっしゃる課題や、薩摩川内市におけるスマートシティについて、トークセッションを行いました。
その内容はまた次の記事でレポートします。