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2019.3.12 私鉄3.0—渋谷のまちの変遷、これからの住宅・商業を考える

戦略プロジェクト室の黒田が、入川スタイル&ホールディングスの入川秀人さんとともに「私鉄3.0出版記念イベント」(著者:東京急行電鉄株式会社執行役員 東浦亮典さん)に登壇しました。入川さんは、渋谷の高架下の活用で大きなムーブメントを作ったSUS(shibuya underpass society)を手がけるなど、渋谷のまちの転換期をつくってきた人物です。一方UDSは、昨年渋谷ストリームホテルエクセル東急のインテリアデザインを手がけ、新しい渋谷のまちづくりに関わらせていただきました。
会場は東京駅KITTEにあるマルノウチリーディングスタイル。私鉄のビジネスモデルの変遷とともに、渋谷のまちや沿線のまちづくりを考えるイベントとなり、本に囲まれた空間の中、最年少は中学生から鉄道やまちづくりに関心のある多くの参加者が集まりました。

私鉄ビジネスモデルの変遷

東浦さんが、書籍の中でも紹介している私鉄のビジネスモデル1.0から3.0への変遷について解説していきます。

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1.0=田園都市通勤モデル
イギリスの田園都市Letchworth Garden Cityをモデルに、快適に職住近接できるまちのモデル。
郊外の宅地販売生活サービスや通勤電車、都市の業務や商業で稼ぐモデルです。

2.0= 郊外での人口減と高齢化が起こってきたときに、これまでのように遠距離の電車通勤を前提としない働き方が増えます。そうすると郊外では宅地販売ではなく郊外の再生・生活サービスで稼ぐように、通勤鉄道ではなく「交流鉄道で稼ぐ」というように変わります。

3.0=最近台頭してきているAIやIoT、ロボティックスなどICTのプラットフォームで包括性を持ってまちをマネジメントしていく。日本ではまだまだ実現が遠いようにも思えますが、これが実現しかかっているのが120万人ほどの小国でありながらIT立国を掲げている、ヨーロッパのエストニアです。

渋谷のまちの変遷を語る

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続いて入川スタイル&ホールディングスの入川さんが、渋谷のまちの変遷を追っていきます。

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入川さんは渋谷のまちづくり、都市計画として大きな転換となったSUS(shibuya underpass society)の仕掛け人。 高架下に新しい価値を見出し、まちを活気を与えるカフェの創造をして東急東横線の高架下の開発を行いました。それまで、暗くて怖い、ネガティブなイメージだった高架下を安心安全のまちづくりへ大きく変えたのです。

2002年ごろから、感度の高いIT系ベンチャー企業やデザイン系ワーカーが増加し、そういった人たち向けにSOHOやコワーキングスペース、夕方5時までランチを出す飲食店などを手がけ、カフェを中心に地域に寄り添いコミュニティを育む取り組みを実施してきました。今では高架下を活用したお店や、カフェなどはまちでよく見かけますが、当時は新しく、そこに若い人たちが集まり活気付くというのは大きなチャレンジだったそうです。

渋谷ストリーム

「渋谷ストリーム」は東急東横線が地下に潜り込んだことで、旧東横線渋谷駅のホーム線路跡地およびその周辺地区を再開発したプロジェクト。その中に入る、渋谷ストリームホテルエクセル東急は、渋谷らしいイメージを新たな視点で発信するホテルとして2018年9月に開業しました。

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クリエイターが住まうレジデンスのようなデザインの発想とホテルの機能性を掛け合わせて、非日常性と居心地感のバランスが楽しめる空間を実現しました。

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開業直後から、開かれた線路ぎわと川沿いに細く代官山へ続く道ができていて、人の流れ(ストリーム)がここにできていることを実感できる場になっています。

空き家の課題とまちの可能性

おわりに、会場の参加者からまちづくりについて聞いてみたい質問を募ります。

Q. 都内でも空き家がとても多い地域もあります。そこに対する取り組みは何かお考えだったりしますか?

(東浦さん)
住み替え促進事業ということを行なっています。
駅から離れた一戸建てから、高齢になると利便性から駅近にマンションを購入することで地域内移動が起こります。
私たちは元の家を預かってリノベーションをかけ、子育て世代へ循環したいと思っているのですが、金銭的に困っていないため手放さない方もいらっしゃるため、増税していくのも一つの道だと思います。

(入川さん)
私が関わっているシャッター商店街のプロジェクトでも同じようなことが言えます。税法が変わって放置すると税金が上がる、というようになりました。商業は一部そうなっているが今後住居もそうなるのではないでしょうか。

日本は常に良い状態に空き家を保つ仕組みがなくて、放置される資産になってしまいます。日本人は土地に興味があるが建物そのものに興味がないことも原因の一つです。中古ビルや住宅をリノベーションする事業では、特に若い世代は必ずしも新築に惹かれる訳ではないため借り手がすぐつきます。駅近が欲しければ、リノベーションするしかないという時代になるし、市場も十分あると考えています。

Q. 郊外のまちを魅力化するにはどんな可能性がありそうでしょうか?

(黒田)
私も都心から1時間ほどの逗子というところに住んでいます。
都心から見ると、鎌倉で観光地となり、それ以降は東京の経済圏ではないところで小商い、顔の見える商売をやっている店が多くとても魅力的。まちをつくる時に、デベロッパー目線だとそこの賃料払えないと店を出店できない、ということがありますが
先ほどの私鉄ビジネスモデル3.0に出てくるように、エストニアなどのようにAIやテクノロジーを駆使して、電車に乗っている人がどういう購買活動をしているか、本当のニーズはどこにあるのか、などのデータを取り、まちづくりに反映することが今後はできてくるはずです。そんなところに可能性があると感じています。

参加者の皆さんからも問題意識を多くシェアいただき、私鉄のビジネスモデルを中心に、これからのまちづくりの中での住宅や商業の未来を幅広く考える会となりました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

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