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ブログ 2019.5.23 UDSが廃校をリノベーション、地域住民と一緒に食べる給食も運営する日本初のイエナプランスクール「大日向小学校」開校

長野県は佐久穂町。人口10,000人ほどの小さなまちです。JR北陸新幹線 佐久平駅から車で30分ほどのそのまちに、廃校をリノベーションして新たに開校する日本初のイエナプランスクール「学校法人茂来学園 大日向小学校」はあります。

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「誰もが、豊かに、そして幸せに生きることのできる世界をつくる」ことを目指す「イエナプラン」の考えを取り入れた、日本で初めての小学校です。

教育の新しい選択肢として、これまでにないものを地方で提供することにより、「新たな地域活性のあり方」を提案しています。

UDSでは、校舎改修の企画設計、そしてまちの人にも開放される給食「学校ごはん」を提供する「大日向食堂」の運営というかたちで関わっています。また、UDS代表の中川は学校法人の評議員として、運営サポートも行っていきます。

「イエナプラン」とは?

オルタナティブ教育の一つで、一人ひとりの個性を尊重し、自分から学びにいくことを大切にする教育コンセプトです。オランダには、なんとイエナプラン教育を取り入れる学校が220校以上もあります。
イエナプラン教育の特徴は大きく4つ。

異年齢の子どもたちが一緒に学ぶ「マルチエイジ」、子どもたちと教員が車座になって話し合う「サークル対話」、教科で区切らずに学ぶ「ワールドオリエンテーション」、そして自立学習の時間である「ブロックアワー」です。

UDS代表の中川は、今後ますます変化が激しくなっていく時代において「自ら考える力を養う「創造性教育」のようなものが今後さらに必要になってくるなかで、教育の選択肢が少ないのではないか」という課題を感じていました。

そんな中川が、2012年、コワーキング事業「LEAGUE」立ち上げのためにオランダへ視察に行った際に出会ったのが、「イエナプラン」という教育コンセプトだったのです。
それをきっかけに、イエナプラン教育の第一人者であるリヒテルズ直子さんや、今回のイエナプランスクール設立のキーマンの一人である「しなのイエナプランスクール 設立準備財団」代表理事である中川綾さんと出会います。

またその後も、まずは自分のできる範囲で、と、高校生に仕事の楽しさを伝えるキャリア教育などを通して、「教育」ということに関わってきました。

それらのことが繋がり、今回、このようなかたちでプロジェクトとして結実することとなりました。

プロジェクトメンバーから施設をご紹介

UDSでは、これまで、使われなくなった校舎や学生寮をリノベーションしてホテルにする(ホテル カンラ 京都ホテル アンテルーム 京都)など、教育施設のリノベーションにも多く関わってきました。
そのような経験・ノウハウを活かしながら取り組んできた今回のプロジェクト。
オランダへの視察や、教員のみなさんとの合宿などを通して、イエナプラン教育への理解と共感を深めながら校舎改修の企画、設計を行ってきました。

あたらしい"境目"をつくる」ことをコンセプトに、校舎改修の企画、設計を行いました。オランダのイエナプランスクールを視察した際、まちの人が当たり前のように教室に入ってきて、子どもたちとともに学び始める光景を目の当たりにし、そんな風に境界を超えていく、捉え直してみることができたらと考えています。(企画・澤田

イエナプランの思想を設計に落とし込むことを常に考えていました。つながりを生み出す空間づくりや、使い方を限定せず、使う人の工夫の余地を残すことを意識しています。また古い部分と新しい部分が混ざりあうようなデザインを試みており、できあがった校舎を見て、卒業生の方が、当時を懐かしく思い出してくださったのが何より嬉しかったですね。(設計・小田島

そう語る二人から、今回のリノベーションでこだわったポイントを教えてもらいました!

point.1
地域へ開放したエントランス

昇降口を、地域の誰もが入りやすいエントランスへ。
昇降口を、地域の誰もが入りやすいエントランスへ。

point.2
誰にでもオープンな職員室

サークル対話がしやすいように、掘りごたつのスペースも!
サークル対話がしやすいように、掘りごたつのスペースも!

point.3
リビングルームとしての教室

黒板を取り払い、教室ごとに壁をカラフルに塗装。
黒板を取り払い、教室ごとに壁をカラフルに塗装。
黒板を取り払い、教室ごとに壁をカラフルに塗装。
黒板を取り払い、教室ごとに壁をカラフルに塗装。

point.4
廊下はリビングルームの延長

教室と廊下の間の壁はガラス張りにし、様子がわかるように。
椅子や棚をランダムに配置。使い方はその人次第。
教室と廊下の間の壁はガラス張りにし、様子がわかるように。 椅子や棚をランダムに配置。使い方はその人次第。

point.5
厨房の様子が見える180席の食堂

元の食堂をそのまま活かし、厨房の様子が見えやすいように改修。
元の食堂をそのまま活かし、厨房の様子が見えやすいように改修。
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今回、最もこだわったポイントのひとつが、給食にもきちんと力を入れて取り組むという点です。

「イエナプラン」のコンセプトや考え方自体はオランダから持ち込んだものですが、日本の、このまちでやるからには、日本らしさ、佐久穂町らしさを取り入れるべきだと考え、「食育」を伝えていく場として、給食に取り組むこととなりました。

UDSではこれまで、食堂事業に取り組んできており(リラックス食堂)、管理栄養士が、食堂を利用する学生さんの健康をサポートしながら、食育の活動を長年行ってきました。
そのノウハウを活かし、今回、UDSとしてははじめての給食事業として「学校ごはん」に取り組むこととなったのです。

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「大日向食堂」として、そこには管理栄養士が常駐します。子どもたちの、そして地域のみなさんの健康を考えた、美味しく楽しい「学校ごはん」をつくっていきます。

来る6月4日(火)には、「給食」のこれからについてお話するイベントを予定しています。日々の運営のこと、給食事業の企画や運営について、ご興味ある方はぜひ起こしくださいね。

地域のみなさんをお招きする「開校を祝う会」を開催!

新学期、小学校が開校してから1ヶ月弱の4月27日。

リノベーション後の新しい小学校の姿を地域のみなさんに見ていただくために、「大日向小学校 開校を祝う会」が開かれました。

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当日は小学校へ通う児童の親御さんや、地域の皆さん、そしてオランダから駆けつけてくださった皆さんも含め、300名近い方々にお越しいただき大盛況!

「リラックスチキン」「オープンいなりずし」「ほうじ茶プリン」など、リラックス食堂のメンバーで考えた特別メニューで、皆さんをお迎えしました。

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大盛況の大日向食堂。
大盛況の大日向食堂。
子どもたちが率先して配膳してくれました。
子どもたちが率先して配膳してくれました。
駆けつけてくださった地域の皆さん。
駆けつけてくださった地域の皆さん。
そして、オランダの皆さんも!
そして、オランダの皆さんも!
小上がりスペースも人気です。
小上がりスペースも人気です。

子どもたち、大人たち、みんなの笑顔と笑い声が絶えない時間になりました。

廃校の活用が地域にもたらすこと

今回、初年度の児童募集の際、30名ほどの見込みに対して、ありがたいことに70名を超える応募をいただきました。
次年度以降も児童数が増えていくことを考えると、10,000人ほどの人口に対して、その4%にあたる、400名ほどの移住につながることとなります。
地域活性のひとつのあり方として、「教育」という新しい選択肢を提案することにより地方に人が増えるという、ひとつの実証となりました。

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廃校の活用や、既存の食堂事業との親和性など、UDSとしても大きな意義のある今回のプロジェクト。
これからも、「大日向食堂」の「学校ごはん」を通じて、子どもたちと、地域の人たちをつなげ、佐久穂町を元気にするお手伝いをしていきます!

【関連イベント情報】今回の内容に関連して、UDS代表の中川が、つぎの2つのイベントに登壇予定です。
■ 『給食の歴史』刊行記念イベント 今までの給食とこれからの給食
2019年6月4 日(火) 19:00-21:00 @神保町ブックセンター
刊行記念イベント。対談を通して、給食のこれからを考えます。

詳細・お申込みはこちら

■ 第10回未来教育ナイト
2019年6月13日(木) 19:00〜21:00 @新渡戸文化学園小中高等学校

教員だけでなく、未来の教育デザインに関心のある全ての大人がパートナーシップを組んでいくことを目的にした「講演会×懇親会」です。

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