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ブログ 2021.3.8 「仕組みのデザイン」で社会を変える。マザーハウス山崎氏とUDS黒田が考える「次の10年をつくる経営とデザイン」

「最高の同僚とつながるコワーキングスペース」をコンセプトとするLEAGUE 銀座は先日、開業から8周年を迎えました。これまで関わってくださったたくさんの方々、そして日々ご利用いただいている会員のみなさまのお陰です。ありがとうございます。
先日、LEAGUE 銀座では開業8周年を記念したイベントを実施。そのなかで、(株)マザーハウスの代表取締役副社長であり、ご自身が代表を務められている(株)Warm Heart Cool HeadとしてLEAGUEにご入居いただいている山崎氏をお招きし、UDS代表の黒田が「次の10年をつくる経営とデザイン」をテーマに対談させていただきました。

世の中に対する疑問や違和感が、事業の原点

山崎:UDSさんはいろいろな事業を手掛けていますが、次に何をする、というのはどうやって見つけてきたんですか?

黒田:いろいろな視点はありますが、世の中に対する疑問や違和感、なんでこうなってるんだろう?というところからスタートしています。UDSの最初の事業コーポラティブハウスも、代表の梶原が当時、自身でマンションを購入したことがきっかけでした。
高いお金を出して買ったのにも関わらず、自分の好きに間取りが変えられなかったり、壁紙や床材はすでに決まっていたりするのはおかしいのではないか。あるいは、同じ建物に住んでいる人同士であるにも関わらず、コミュニティが生まれないのはなぜなんだろう、と。
そこで、マンションをつくって売るのではなく、土地だけある状態で住む人たちを集め、約2年かけて自由設計で一緒に住宅をつくっていく、というコーポラティブハウスに取り組んだんです。長いプロセスの間にお互いの関係性ができてくる。住宅という空間づくりを通して小さな「点」をつくり、コミュニティをつくっていく、ということをやってきました。
これは一例ですが、やはり現状の課題や、自分がユーザー側だったときの違和感、そういうものが活動の原点になっていると思います。

▼その後の展開「コーポラティブヴィレッジ」でのひとコマ。住民同士のコミュニティが生まれています。
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山崎:UDSさんがやっているビジネスって、相当「めんどくさい」ものですよね。「コミュニティをデザインする」みたいなことは、言葉としては美しいけれど、実態としては相当めんどくさい。「コミュニティ」や「デザイン」といった言葉は世の中に氾濫していますが、実態として面倒なことにしっかりと取り組むには、やはり強いコンセプトと、疑問や違和感といったものを原点とする想いが伴っていないと、やり遂げるのは難しいと感じます。

黒田:そうですね。「コミュニティ」や「デザイン」とあわせて、「まちづくり」という言葉もある意味強い言葉で、逆に思考停止に陥りがちな言葉かな、と思うことはありますね。

山崎:「まちづくり」もそうだし、「SDGs」もそうだし、かっこつけの正しさがあふれる社会になってきている気がします。SDGs自体が悪いわけでは全く無いのですが、どこかで「SDGsって言っとけばいいや」みたいになっていないか。

黒田:私たちは「地域」という言葉をひとつのキーワードとして大切にしています。地域にホテルやレストラン、カフェなどをつくり、お客さまに来ていただく。地元の食材を仕入れたり、地元作家さんとつながったり。雇用を生むことにもつながる。でも最近、それ以上にもっとやれることがあるんじゃないかと考えています。
その一つが、建築のつくりかた。いまでも部分的には地域の素材を用いた設計を行っていますが、それでも全てとは言えず、コストの面などから例えば流通しているコンクリートを使ったり、近くに木があるのに製材された別の地域の材を使っていたりもします。
もっと地元のものを使って、その地域でしか表現できない「らしさ」を伝える建物をつくることにもチャレンジしたいですね。施設の運営よりもっと手前の、ハードをつくるプロセスから、地域というものをより深く考えていきたいと思っています。

ハードだけでなく、ソフトのデザインがますます重要に

黒田:そしてハードだけではなく、ソフトの面でももっとできることはあると思っています。とある南アジアの国では、リゾートホテルとともにホテル学校を現地につくれないか、というようなことを考えているところです。そのホテル学校の卒業生が日本に研修に来て、最終的には現地で支配人になる、という循環をつくることができれば、地元の雇用や、若い世代にとっての夢や希望をつくることにもなるのではないか、と。

山崎:いま、マザーハウスではバングラデシュの工場を建設中なのですが、そこには地域に開かれた学校と病院が併設予定です。学校には職業訓練校もつくって、工場で働く人も育てたいと思っています。ベタな言い方をすると「コミュニティデザイン」のひとつに括られるのかもしれませんが、そういうものは短期間で成し得るものというよりは、5~10年といったある程度長い時間軸で考えていく必要があると思っていて。
どれくらいのコストをかけながら、生態系をつくり、自分たちにも還ってくる仕組みをつくれるか、が大事。言い方が少し悪いかもしれませんが、慈善事業だけではやれないことも、ちゃんと息長く取り組みながら、ブランド力や人材といったものを自分たちのところにまで戻していく、そういう「仕組みのデザイン」をしていくことが、これからの企業のあり方だと思います。

▼マザーハウスの自社工場、マトリゴールの様子(マザーハウス公式HPより)
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黒田:現地で若い人に「将来どうなりたいの?」と聞くと、多くの人が「社長になりたい!」と答えるんです。「何の社長かはわからないけど、とりあえず社長になりたい」と。おそらく彼らの周りには具体的な仕事をしている人が少なく、社長になればお金持ちになれるという発想しかない。自分のまわりに夢を持って取り組んでいる人がいない状況で育つ人たちがつくる社会はどうなってしまうんだろう、と問題意識を感じました。そういう意味でも、そのプロジェクトは単なるリゾート開発というよりも、現地の人たちの人生にまで関わることだという意識が特に強く、その人たちにとっての選択肢をつくっていきたくてやっているところがありますね。

山崎:とくに途上国には、産業をつくっていかないといけないと感じています。バングラデシュはもともと農業の国ですが、ITとかモバイルとか、急速に伸びている。ただ、伸びたはいいが産業として成立していないために、優秀な人の仕事がない、という状況になってしまっています。どうやって産業をつくっていくか、社長になりたい人たちに「どんな産業の社長か」までをどうイメージさせるか、はこれから真剣に取り組んでいかないといけないテーマの一つですね。

後半は、参加者のみなさんからの質問も続々と

今回、事前の質問募集も含めなんと300件以上の質問が寄せられていました。

コロナによって人と人とのつながりが希薄になるとも言われていますが、どう考えますか?

山崎:デジタルって、使い方によっては人と人とのつながりを表現できるなと実感しています。これまでずっとリアルの場で行っていたマザーハウスカレッジを、今回を機にYouTubeに移したのですが、リアルの場よりもずっとたくさんのコメントや反応がもらえるようになって。これまで恥ずかしくてみんなの前で話せなかったような人も自由に発言できるようになって、より「人」がいることを感じられるようになった気がします。またオフラインで開催できるようになったときも、ここで得た経験をうまくスライドさせられたらと思っています。

この1年、社会が大きく変わる中で、ご自身の考え方が変わったことはありますか?

黒田:コロナ以前からも考えていたことではありますが、自然との関係をどう取り戻すか、という意識はさらに強まりました。明治維新以前の幕藩体制時代には川の流域に沿ってエリアを区切っていたという「流域思考」に注目していて。小さなコミュニティの単位で経済が循環していた、そのあり方を改めて見直す必要があるんじゃないかと考えています。

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終始ハイスピードで熱いトークが繰り広げられた今回のイベント。「仕組みのデザイン」というのは、これからの10年を考える上で一つの重要なキーワードになりそうです。

事業内容は違えど、目指す未来像や想いは近いと改めて感じられた貴重な時間でした。山崎さん、そしてご参加いただいたみなさま、改めてこの度はありがとうございました。

LEAGUE銀座では、今後も一人でも多くのリーダー育成と、コンセプトである「未来のビジネスフレンドとつながる」コミュニティづくりを行っていきます。定期的にイベントも開催していきますので、9年目もどうぞよろしくお願いいたします。
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