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ブログ 2016.7.23 まち×ホテル×アート – 2016.7.22 アンテルームトークショーより

7月22日に増床グランドリニューアルを迎えたホテル アンテルーム 京都。当日のレセプションでは建築評論家の五十嵐太郎さんを聞き手に迎えた、 SANDWICHの名和晃平さんとUDS中原典人のトークショーを開催。人で溢れかえる会場での1時間強にわたるお話のなかから一部を紹介します。

名和さんとUDSのコラボレーションの始まりについて

名和さん:最初アンテができるときにアンテルームのロゴなどをデザインした原田祐馬さんから、エントランスアートで何かできないかと連絡をもらったのがはじまりです。
UDSの予算が最初本当に少なくて(会場笑)。アートというよりインテリアかな、という印象の予算感で、アート作品を納品する形としては受けることが難しかったんです。そこで、自分がここに住んで作品を貸す、という設定であれば作品を置けるのではないか、と提案しました。それがエントランスの鹿のアート作品なのですが、その作品をきっかっけに、ただのデザインホテル、ではなくて色々な作品を持ってきて見せる場所、プラットフォームになりました。

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アーティストは既存にはなかった、いわばとんでもないものを提案するのが仕事です。でもホテルは子どもから高齢の方まで、現代アート好きな方からそうでない方まで色々な方がいらっしゃる場所です。ですから、アンテルームとしてはアートはもちろん受け入れたいけれど、ここまでがぎりぎりです、というせめぎ合いをオープンからこれまで重ねてきました。で数年たってだんだん麻痺してきたのか(笑)最近は本当に懐深く受け入れてくださるようになって。アーティストとともにアンテルームが出来上がってきたのかなと感じています。単にに作品を入れるだけではなく、アーティストの関わりを常に入れようとしていて、それがほかのホテルとアンテルームが違うところだと思います。

今回の増床の取り組みについて

名和さん:今回67室増えるということで客室内も含めたアートディレクションのお話しを、私がディレクターを務めるSANDWICHにもらいました。これもまた予算が少なくて(笑)SANDWICHのリレーションを使って、学生さんから著名な作家さんまで、無償で作品を見せたいアーティストたちにお声がけしました。ほとんど友人関係、つながりで集まってもらっていて、蜷川実花さんも友人で京都に遊びに来たときにアンテルームを見てもらって「何かしませんか」、とお誘いしたのがきっかけでした。
ある作家さんんにはコンセプトルームをお願いしたり、ある作家さんにはこの場所で作品を見せて欲しいとお願いしたりして、それらを我々からUDSにプレゼンをしました。

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作家は作品を見せる場所が欲しいんです。でも、わざわざ場所をかりて展覧会をやっても1ヶ月でそれは終わってしまう。最近少し増えてきているホテルでのアートフェアもわざわざギャラリーがホテルにお金を払っているので、ところせましと作品を並べるわけです。ベッドの上とか。

一方ホテルはライフスタイルの提案の場です。お部屋に入ってきて、寝て、起きて、ここまで作品に向き合ってもらえる場所はなかなかないです。作家にとってはものすごい機会です、また空間全体をコーディネートしているので、アートフェアなど作品がよりさらによく見えるはずです。こんなにバラエテイに富んだ色々な世代の作家の作品を一同に見ることができるのは、日本でも世界でもなかなかないと思います。

それぞれの部屋に作品をどう置くか、内装との関係性

中原:インテリアデザインが終わった状態で渡したので、こうしたい、ああしたいと色々と意見がでてきてそれを調整していくのは正直大変だったところはあります。ただ今回はアーヴァンカルチャーをちゃんと表現したい、と思っていましたので、インテリアは「器」として、存在感として強くなく、アートが生える空間にするためにちょっとづつ変えていきました。

名和さん:地元の作家が多いので、何度も通ってもらってディスカッションしました。ただ持ってきて置いた、ではなくて空間に対してどれだけ遊ぶかをかなり話し合いました。

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アーティスト・アートとまちの関係

名和さん:今アンテルームがある京都駅の南側はもともと何もなかったのですが、アンテルームができたことによりいきなり街にコンテンポラリーアートが出現したわけです。これができてから場所の種類が変わって、アーティストが遊べる場所になりました。

ニューヨークのSOHOやロンドンのイーストエリアもそうですが、もともと土地代が安いからアーティストが移り住む。そうするとおしゃれなカフェやショップが増えてカルチャースポットになる。というように、アーティストが何かやりだした場所でまちが変わってきます。京都で、コンテンポラリーアートでそれができるっていうのはすごく画期的なことだと思っています。
もう少しでアンテルームの近くに京都芸大も移転してきますし、カルチャースポットに今後なっていくのではと思っています。

中原:もともとUDSがここでやりたかったのは「まちづくり」なんです。ホテルは外に対して開かれている施設なのでこのまちを少し変えていけるじゃないかなと思ったのです。アンテルームができたことでまちのポテンシャルが少しづつ引き出されてきているようで、すごく嬉しいです。

これから

名和さん:京都のアートの発信拠点といえば、アンテルーム、という場所になり、ここで作品を置くことがすごい、すごい売れるみたいに10年後にはなるといいと思っています。
日本はアート=美術館のイメージが強いです。でもアートは日常生活の中で発想したりすることなので、住んでいる家など、生活の中にアートがある、そのきっかけや始まりになればいいなと思っています。

(おまけ)

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